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「国際開発協力へのまなざし ―実践とフィールドワーク」参加メモ+α

1. 概要
平成19年11月30日に大阪はIMPホールで行われたシンポジウムです。主催はみんぱくなども含む人間文化研究機構と言う団体でした。長野理事の挨拶の後に2つの講演があり、最後に参加者によるパネルディスカッションと言う内容でした。
テーマは題名の通り、国際開発協力についてです。国際開発協力に関して人文科学が何をできるのか、そうすべきかと言う視点からの様々な意見を聞くことができました。国際化、ではなく地球化が進む今だからこそ、人文学が積極的に社会に関わっていく、実用の学としての人文学について考えさせられました。その上で、開発協力の手段の一つとしてのフェアトレードについて様々な立場の人の意見を知ることができました。

あくまでメモなので中々わかりにくいかとは思いますが、それ一つだけでも十分深く考えることができるような台詞も多かったので書き込んでみました。

2. 理事挨拶

長野 泰彦 人間文化研究機構理事
 
人文科学の可能性についての話が中心。多様な背景を背負った人が交錯する社会の中でこそ人文科学が生かされるべきである。特にこのシンポジウムでは開発における文化人類学やフィールドワークの積極的な役割を見いだすべき。
そうした過程においては人文学単独ではなく人文学と社会科学の中で新しい研究領域を開き、学際的な研究を進めることが肝要である。その中で学問の実践的な応用(例えば開発援助の社会学)を追求すべき。
 


3. 「世界の国際開発協力の潮流と日本の貢献」

佐藤 寛(アジア経済研究所・研究支援部長)

(1)   フェアトレードの大まかな類型

a.  最もラディカルなもの:既存の体制をぶち壊す意味でのオルタナティブ、反グローバリゼーション
b.  ビジネス志向: ブームを利用して企業、(例)エスニック雑貨
c. 批判対策のフェアトレード:企業の隠れ蓑 (例)イメージ戦略
d.  改良主義的フェアトレード: (例)スティグリッツ
 
 

(2)   国際協力に関する世代ごとの認識の違い

団塊の世代の場合、日本の栄達は自分達の手柄、御褒美である。対して豊饒の世代(80~)→日本の繁栄がむしろ当たり前、自然な状態であるという認識であり、そうでない途上国は「かわいそう」(純粋な動機)
 
しかしそうは思っても、一般人にとってボランティアはある意味高嶺の花であり、だれもが私財をなげうって開発協力に身をささげられるわけではない。お金の面でも、精神的な面でもボランティアはコストが大きすぎる。一方、フェアトレードは「より快適な」支援のツールである。現場の苦しさは全て価格の中に溶け込んでいるので一般人でも気軽に参加できる。国際協力を広めるためには優れた間接的ツールである。
 

(3)   チャリティー援助

じつは国際協力の歴史は古い。単純な、「かわいそう」と思う気持ちから、18世紀の植民地時代より既に始まっていた。これにはキリスト教の精神が多分に貢献していた。しかし、善意は善行を保障しない。
 
(例)日本のおばあさんが、壊れた車椅子を修理して提供したい。しかし・・・
·   相手側集団の中で、その内部の理屈(権力関係など)によって配分される。
·   日本の事情と相手側の事情の違い。日本での使用のために作られた車椅子が相手側の環境にあうかどうか。日本の車椅子は舗装された道路で使うのが前提、でも途上国では・・・?、壊れた場合代わりの部品をどうする?極端な場合、コンピュータ制御の車椅子も壊れてしまえばただのごみ。
·   輸送費など不必要なコストの発生。客観的に見た場合、いっそ現金で渡したほうが効果的。一日中バイトして寄付>一日中募金活動
 
つまり、「われわれの思いと彼らの事情のミスマッチをどうすべきか」と言う問題にぶち当たる。
では、どうするか?→援助が持つインパクトの効果を正しく理解することが必要。
どのように?→人文科学の活用。フィールドワークの重要性。
 


4. 「フェアトレード:チョコレートを食べて友達を増やそう」

鈴木 紀(国立民族学博物館・准教授)

(1)   日本のODA

2007年、7293億円(1997年ピーク時の62%)
一人当たり5709円
10082人(2006年)成年海外協力隊(総人口の0.01%以下)
 

(2)   フェアトレードの特徴

公正な貿易とはなんだろうか?公正な貿易=搾取しない貿易=コストの回収できる貿易=ワーキングプアにならない貿易である。ワーキングプアにならない貿易をするためには援助とフェアトレードの組み合わせが効果的。つまり、フェアトレードを貿易初心者の「市場参入トレーニングの場」として考える。
 

(3)   フェアトレードチョコレートを食べると良いこと

a) おいしい。(良質な素材+スイスのチョコレート加工技術)
b) 作った人が経済的にも、精神的にも満足。
c) 両者が友達になれる(出会いはお店で)
 

(4)   フェアトレードチョコをたずねるフィールドワーク

日本で売られているチョコのほとんどはスイス製である。スイスの優れたチョコレート技術を利用することでチョコレートに付加価値をつけるのが目的。そして、スイス製のチョコは中南米のカカオ(メキシコ、ドミニカ)をりようしている。ただしエクアドルではチョコレート加工まで行っている。
 
a.  メキシコ
カイ・カブ(1992年)チアパス州 タパチュラ
カカオの価格が暴落したので、付加価値をつけるためチョコレートに加工。
NGO団体VIO PLANETA フランシスコ・エルナンデス代表
 
b.  ドミニカ共和国
Gualberto acebey “CONACADO”(http://conacado.com.do/

FLOの買い付け価格に大きな差が出るため有機栽培の研究
 
c. エクアドル
Jorge Sanchez

低地熱帯部で栽培し、高知でチョコレートに加工
 

(5)   消費者の心得

a.  「もっとフェアトレード商品を!」という声を小売店、輸入会社、食品会社、製菓会社に送る。更なる取り扱いを求める。
b.  FLOやIFATなどの団体や研究者へフェアトレードの成果を尋ねる。
c. フェアな生き方をする。日常生活で「フェア」を意識することで開発問題、環境問題への解決に近づく。ゴールは非常に遠いけれど、一番確実な方法は買い物からはじめること。

 

5. 総合討論

(1)   概要

総合討論「国際開発協力のあり方とフェアトレード」
座長:岸上 伸啓 (国立民族学博物館・教授)

パネリスト:
新井 泉 (国際開発協力銀行・開発金融研究所・所長)
石原 聡(世界銀行・社会開発専門官)
大石 芳野(写真家)
大橋 正明(恵泉女学園大学・教授)
鈴木 紀(国立民族学博物館・准教授)

 

(2)   内容

新井:
日本のODAの考え方は自助努力を補助(=自主性の尊重)で、1991年から世界最大のODA出資国だったが方針を転換。MG(ミレニアムゴール),911ショックもあって、現在は効率性・質の向上を目指すようになった。しかしこれからは、量も充実すべきであると考える
 
鈴木:
開発も人間の文化の問題である。歴史や文化を反映した形で開発の形態は決まっていくべきだ。現地の人が外から入ってきたもの(アイデア・金・物・人)をどう考えるか、を考える。(援助が持つインパクトの効果を正しく理解することが必要。
 
不明:
フェアトレードのシステムは自立支援システム
FLOは物、IFATは事業の認定。
 
豆ふく・・・女性四人で輸入から販売までを切り盛りする団体。
大阪よどがわ市民生協・・・バナナで産地直結を実行。
 
ビジネス環境を整えるにはインフラが必要。
インフラ:ソフト(制度や法律)+ハード(物的なインフラ)
起業する人間がきちんと機会を得られる環境づくり、つまり適切な融資が行われるような制度づくりがひつようである。(ソフトインフラと関係)
 
 
 
「フェア」という言葉の持つ危なっかしさ。「フェア」とはなんだろうか。
 
鈴木:
「フェア」でないものとは?
普通の貿易全てが搾取的なわけではないが、普通の貿易では生産者が値段を決定することはできない。「生産者のためになっている」と言う点で「フェア」を理解。
 
新井:
フェアで無い原因

      貿易の仕組み、生産者に対する補助金などのこと

      生産側のハンディ

      情報の格差

 
石原:
「自由な市場における自由な取引」=「フェア」
しかし、市場経済システムは効率性はあるが公平さは担保しない。
 
大橋:
途上国の中における格差、どこにアンフェアがあるのか。
アンフェアは一つの国の中でも起こりうるものであり、南北だけの問題ではない。モニタリングシステムの欠点、狭さ。
 
公平さか平等さか、どちらがフェアなのかを考えるためにはフェアトレードの目的自体を考える必要がある。
 
石原:
フェアとは平等さである(べき?)。
フェアトレードのおもしろいところはそうした平等性に一石を投じたいという人が、まさに一票を投じることができる点
フェアトレードは効率と平等の選挙。
 
新井:
ブランドとしてのフェアトレードもありではないか。
 
大橋:
フェアトレードへの貢献。一番大事なのは自分達で組織化すること。
現地の住民のフェアネスを中心に、日本の需要も考慮。
 
新井:
ICT→ デジタルディバイドの危険性をはらむと同時に可能性もある。情報の非対称性も含めて考えるべき。ODAの焦点としても有意義。
 
鈴木:
援助慣れした住民の文化の研究が必要。成功例と失敗例を比較するべき。
 
 
国際協力の展望
 
石原:
人道援助も開発援助も人生の経験が必要
団塊の世代の人間のエネルギーを向けたらすごいのではないか。
 
鈴木:
一つ一つのプログラムを大切にすべき。
現地の文化の理解をした上で、丁寧に
プログラムはある意味実験
→成功しても失敗しても丁寧に評価・分析をして次に生かすべき。
 
大橋:
南と北のフェアトレードの関係
南は南で内需拡大にも努力
もっといろいろなところでフェアを実践。
 
シャプラニールは、もともとフェアトレードをしたかったわけではなくて、バングラデシュ国内で商品が売れなかったために外へ輸出しただけ。やはり地産地消がベスト。
 
 
 
 
感想
 
実はこのメモを纏めたのはシンポジウムが終わってから数ヵ月後のことでして、それから数ヶ月経って今に至っています。曖昧な記憶を頼りながらがんばったものの、かなりの部分で勝手な解釈や思い込みがあるかと思います。そういう意味では、このメモは半分は自分の意見を纏めなおしたものと考えてもらってもいいかもしれないです。また、このメモの中では自分がこのシンポジウムでなるほどと思った台詞は「善意は善行を補償しない」「援助が持つインパクトの効果を正しく理解することが必要」「しかし、市場経済システムは効率性はあるが公平さは担保しない」「フェアトレードは効率と平等の選挙」などです。

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comment

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報告ありがとう!

個人的にはフェアトレードの類型になるほどと思いました。スティグリッツを例としてあげてますが、改良主義的フェアトレードってどのようなものでしょうか?

時間がない現代人にとって、「買い物」という自分の生活に密着した行動によってどのような世界にしたいのかということに(間接的にでも)手軽に意思表示できるには本当に強みですよね。日本は優れた広告、耳に残るキャッチフレーズを生み出すのに長けてるし、その影響力は計り知れませんよね。せめて「マイ何ちゃら」「CO2対策」の類と同レベルにメディアに取り上げられるといいんですが、なぜかなかなかテレビでは語られませんねぇ。日本にとって「不都合な真実」よりも不都合なのでしょうか。

話はそれましたが、「援助が持つインパクトの効果」ってこれで正しいような気もしますが、トートロジーのようにも聞こえますね…

やっと(?)帰国しました。
重箱のスミ、つついてよいですか。タパチュラは州ではありません。チアパス州にある地区・市名。
国境に近い移民の多いところです。日系も多し。

「援助が持つインパクトの効果」という言い回しについて。「援助」というのはローカル社会によそからやってきた外来物なわけで、もっといえば異物。
それが投下された社会にどういう影響を及ぼすか、
どういうふうに受けとめられるかは、その社会の文化なり社会状況によりますよね。
同じものを投下してもそのインパクトの現われ方は社会によって異なる。その土地の実情に合わない援助は無駄になるのみならず、新たな混乱を招くことにもなりかねない。そして、実際に深刻な混乱を招いている場所は数多く存在するわけです。
ある援助によってそれを受ける社会にどういう影響が出るかについて予想を立てる、また、問題が発生している場所において外来の要素と当該社会に内在する要因とがどのように絡み合いそうした状況を引き起こしているのか分析する、それが開発の社会学なり開発の人類学というものではないでしょうか。

第1回目のMANA勉強会で、『開発援助の社会学』(佐藤寛 世界思想社 2005年)を取り上げました。興味のある人はまた目を通してみてください。
ブリーフケースにそのときのレジュメも入ってます。

逆の方面から。

援助を受ける側というのは、悪く言えば援助なれしています。
どのくらいなら無理言っても大丈夫、とかこのぐらいならちょろまかしても相手もわざわざ言ってこない、といった駆け引きに長けています。
潤沢な資金源をもつ大きな組織なら、「しょうがないやつらだ」で終わるかもしれませんが、弱小NGOが善意で現地に出かけていって、実際にどのような目にあうと思いますか。

挑発的ですが、あえて一言。
「援助を受ける人は善人とは限らない」

6月には勉強会もあるようですし、またいろいろ話し合ってみてくださいね。

遅まきながら

すいません、投稿しておきながら忙しさにかまけてほったらかしにしていました。自分の書き込みである以上、責任は持たないといけませんね。気をつけます。

そしてコメントありがとうございます。

①改良主義的フェアトレード
講演ではあまり深く取り上げられていませんでしたが、多分aとdの違いは共産党と社会民主主義のそれと同じ感じじゃないでしょうか。既存の体制を力押しでぶち壊していくのか、或いは既存の制度の枠組みを考慮したうえでやっていくのか、だと思います。
とはいえ僕自身長い間フェアトレード関連のことには触れていないのでちょっと心もとないです。スティグリッツ氏はフェアトレードに関した本を出版されているのでそちらを見るのが一番かと。

②援助の持つインパクトの効果
申し訳ないですが、この言葉がそのまま鈴木先生が仰ったものか、自分がその場で思いついたものかはわかりません。内容については武田さんの説明に同感です。どうもありがとうございます。
「援助が持つインパクトの効果」は、「援助が持つ力(インパクト)が実際に与える影響(効果)」と読み替えるといいのではないかと思います。効果というとプラスのことばかり思い浮かべてしまいますがマイナスのことも当然ありえるわけですよね。勉強会で取り上げられていたと思いますが、ある地域への援助が結果的にほかの地域との不和を招いてしまうこともありえるわけです。

③おかえりなさい
おひさしぶりです。そしてご指摘ありがとうございます。修正をしておきました(^^; 援助を受ける人は善人とは限らない、まさにその通りですね。こういう問題を考える時、困っている人=無辜の民=かわいそうな人 と言う無意識の変換が起こりやすいと思います。困っている人はただの困っている人であり、「助けられるべき」「助けるべき」(あるいは「助けてあげるべき」)と言うこちら側の価値判断が時としてよくない結果を招くことがあるんでしょうね。
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プロフィール

みづの

  • Author:みづの
  • MANAは2005年7月、神戸市外国語大学の有志が中心となって組織した団体です。目的はフェアトレードの実践を通じてフェアトレードについて知識を深めることと大学内や地域におけるフェアトレードの普及でした。現在はフェアトレードだけでなく、貿易・開発・人権など様々な視点から物事を考える・学ぶ場として活動しています。
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